ノーチラス

歯の痛みをAUFHEBENしようとしたが、やっぱり痛かった!

と言う お芝居を見た。

アウフヘーベン、なんてなつかしい!!!
この言葉に接したのは、高校以来。

人間の成長段階を、経験の昇華昇華といっていて、
いまいちピンとこないなあ~と常々悶々としていたが
わたしが探していたのは、この言葉かもしれない。

矛盾する諸契機の統合的発展。
止揚または揚棄。保存する。廃棄する。高める。の意。

ヘーゲルだ。

「弁証法的発展では、事象は低い段階の否定を通じて高い段階へ進むが、高い段階のうちに低い段階の実質が保存されること。」

しかし、痛かった!けれども

このお芝居では、物語は歯の痛みではなく、アウフヘーベンの象徴たるうなぎのオペラ歌手の唄、で終わるのである。

こうだ。

この世の高みはチョモランマ?
この世の底は日本海溝?
この世の重いは象?くじら?
この世の軽いは蚊?のみ?
この世の明るいは太陽?ダイヤモンド?
この世の暗いは深海?死の淵の暗闇?
ノーチラス
この世のすべてをその手に持つ
この手の中の2万マイル

実に劇的だ。

唄は場内を圧倒する。
場が音の光に包まれる。

うなぎの唄は、お世辞にもうまい、とはいえない。
が、不可思議に心を打つのだ。

それは音楽の力を持ち、旋律は揺れながらも豊かに翼を広げ
見ているわたしたちを、別の世界に連れてゆく。

問題は、このうなぎが、登場人物の誰ともその世界観を共有していない点だろう。
しかし、その齟齬こそが、芝居、やわたしたちの未来なのかもしれない。

革命そのものが大好きだったチェ・ゲバラ
のなれのはてのネモ艦長に、かつて出合った全共闘のリーダーの姿を重ね合わせた。

当時教えを受けていた作家の先生に、
連れて行ってもらった元闘志のアパートには家具がなく
がらんとした室内の床に、じかに布団や、
ワンカップ大関の空き瓶や、ティッシュや、洋服が、
控えめに散らばっていた。

当局に睨まれて就職もできないから、ちり紙交換で生活している。
と、もじゃもじゃの癖毛で、透明な水のような表情をして、そのひとは言った。

かつての闘争について聞こうとするが、なかなかのってこない。
びっくりするほど、攻撃性がない。

大した話ができないのはわたしの勉強不足のせいだ。
と深く反省したが、
彼がやってきたことと、そのとき周りに漂わせていた清明性が、
わたしのなかでどうも収まりがつかず、
長年その佇まいに疑問を持っていたのだ。

あれはもしかすると、妄想の暴走の果てに、彼の中で何かが決着を見た、その後のかたちであったのか!

と、このお芝居を見て思った。
それなら、戦いの話にどこか虚無感が漂うのも腑に落ちる。

その姿は、革命家と言うより、酒をやめたアル中のひとや
ドラッグをやめたジャンキー、に近かった。
(ジャンキーの知り合いは一度やめ、またその道にもどって消えてしまったので、断言するのもどうかと思うが。薬の話題になると未練ありありの別れがたい恋人についての話をしているのようなニュアンスが漂うのだった。これが進化すると虚無感になるのか。もしかして。)

それも一種の革命運動であり、個人的な革命の勝利だったのかもしれない。

コントロール欲求を脱すると言うか、解脱する。次の段階に行く。あるべき姿に対する執着を手放す。

(そして純粋な自己構成要素ーそれぞれの学びの趣味的な部分ーのみが、
高い次元で保存というか別の展開の契機となるのが、アウフヘーベンなのだろう。
だからこのドイツ語訳に保存と廃棄と止揚というのがはいる。)

それを社会的な規模でやるか、個人の内部でやるかの違いはあるにせよ。

心にあるエゴや暴力や、一面的な善意の発露が穢れなくアウフヘーベンすると
ひとはみんな水のように美しく、すこしだけ神に近づくのかもしれない。

近づく。

戻る。

内なる神性を発揮する。

ちょうど、美しく愛し合う家族を持つ、うなぎの歌手の、輝かしい歌のように。

石川裕人さん。TheatreGroup OCT/PASSのみなさま!
すばらしいお芝居をありがとうございました!

(石川裕人作・演出ー100本目記念作品!!!!!!!!
TheatreGroup OCT/PASSの方々の
ノーチラス~我らが深き水底の蒼穹~というお芝居です。

海底二万マイルを下敷きに、
すばらしい妄想の数々がダイナミックに繰り広げられます( ̄Д ̄)ノ!
夢破れ感満載の色っぽいネモ艦長や、紛れ込んだ人間、歪んだ時系列、変な生物たちー変な生物の癖に、なんかとっても生真面目だったりするーとの絡みがめちゃめちゃキュート!

超おすすめです♪♪
まだ見ていない人はぜひ、ぜひ!8月7日まで!)
# by terasumonnmoku | 2010-08-02 18:16 | Comments(6)

生きる意味が見つからないなら、自分で創って育てちゃおう!というブログです。やっていることはさまざまですが、常に生きることに向かっています。

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