2018年 04月 14日
読書 武士道 新渡戸稲造
<武士道>
新渡戸稲造講談社バイリンガルブックー
花巻の新渡戸稲造記念館で購入。
本書は、1899年アメリカで初版出版。
原文は英語。
爽やかな本である。
武士道についての真摯な解説と、
武士道をもたらした文化に対する誇りがまっすぐに伝わってくる。
そこに三島由紀夫的
ナショナリズムの匂いがない。
本書は欧米の、
日本人理解の基礎となり
サムライのイメージアップに、
多大な貢献をした書籍である。
アジア人差別花盛りの中、それだけのことができたのは、欧米や騎士道を持ち上げる書き方のうまさもさることながら、著者が欧米の女性を妻とし、キリスト教徒であったことも大きく影響しているに違いない。

封建主義には、様々な弊害があったことは事実だが、良いところもあった。
キリスト教の優れた点は一人一人の人間が創造主に対し責任を負っていると考える所だが武士道も、主君(や女子の場合は夫)を通じ、より大きなもののために、自らを差し出すようなところがあった。
等、欧米人のプライドをくすぐる書き方がなされている。
武士は、教養や思想も大切にした。しかし、机上のみの学問は「論語読みの論語知らず」と言って馬鹿にされた。孔子孟子と並んで武士の精神的支柱の1つであった朱子学を継承した王陽明の
「天地生成の主宰、人に宿て心となる。ゆえに心は活物にして常に照々たり」
という言葉を引用し、新渡戸は新約聖書とよく似ている、と書いている。まことにわかりやすく、これは普遍的な「真理」を語る言葉である。
と同時にこうしたバックグラウンドがすでにあったために、日本の近代化にほとんどキリスト教は役に立たなかったこと。
また幕府崩壊、神道の衰退とともに、武士道の未来が閉ざされ行くことを、著者が危惧していた記述がある。事実武士道はすたれ今は見る影もない。
ナショナリズムの台頭は、時代の必然だったかもしれない。しかし、誤解されがちだが、武士道は、決して闘争をもって最善、是とするものではない。
武士にとって重要なその闘争のかげには別の本能が潜んでおり、
それは愛だ。
と新渡戸は言う。
そしてキング牧師が登場する前の時代の国際連盟で、人種差別の禁止を訴え、世界の恒久的平和を実現しようとした。
「柔和なるものがこの地を継ぐ」
という予言を、
新渡戸はこの本の終わりに引用している。
封建日本の精神は失われ、
武士道はいまやかき消えても、
本当の誇りという、
その残り香は残っている。
香りはわたしたちの心にしみつき、
その誇りを刺激し続けるだろう。
まことの誇りは
他者を傷つけ、貶めるためではない。
支え合い、助け合うため。
愛のためにある、と。
武士道は、荒々しく、
自己の権利のために闘争を正当化するような物語ではなかった。
すべてのひと、すべての国々と、
違いを超えてともに手を取り、
歩みを進めて行こう。
と言われているような本だった。
わたしたちにはそのための、
ちからがあると、
全世界に向けて、120年も前に
彼は言っていたのだ。
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